先日ご紹介した心のバイブル「すごい!広島カープ」では、『昔、カープは怖かった―暗黒時代を知る男、横山竜士のカープ今昔物語』と題して、横山投手にスポットライトが当てられています。彼が入団した1995年に同じく誕生した三村監督政権下で厳しく鍛え上げられますが、その年を境に、カープはBクラスの常連としてもがき苦しみます。伝統の『胃から汗が出る』猛練習を耐え抜いても上位に食い込めないジレンマ。山本浩二監督(第2期)やブラウン監督による変革の波に乗り、球場も生まれ変わり、野村監督時代に遂にAクラスを掴むまでの激動の時代を駆け抜けた野球人生。赤い縦ジマユニフォームをこよなく愛した同世代の私としては、読んで胸が熱くならないわけがありません。カープには、1993年オフからのFA制度と逆指名制度導入に始まり徐々に戦力がむしばまれていった暗黒の時代があり、それがちょうどバブル崩壊と共に生まれた“失われた10年”の歴史と重なります。その当時社会に羽ばたいた若者は、就職氷河期世代と呼ばれ、苦労して掴んだ就職先で理不尽な上司のパワハラに耐えに耐え、さて、部下が出来る年頃になったと思えばリストラされ、絶えず時代の憂き目にあっています。そんな世代の悲哀を背負ったわれらが横竜(ヨコリュウ)は、浮き沈み激しく満身創痍になりながらも、野球人生の後半はもっぱら中継ぎとして試合の大事なところを任され続けてきました。そんな彼が20年間にもおよぶ現役生活に別れを告げた翌年、同世代のヒーロー、黒田投手が広島に帰って来ます。運命のいたずらなのか、もう少し現役を続けていたら…。本当に、選手として優勝を味わってほしかった。
今年、そんな彼が投手コーチとなって、カープに戻って来ました。カープの古き良き伝統を彼なりに消化して、現役に近い目線で若い投手を諭し、育て上げ、“投手王国の復活”に尽力していただけるものと信じています。
今回ご紹介するのは、OBとなったばかりの2015年、横山竜士 投手のラストナンバーです。“今”という言葉、ずっしり重く響きます。
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